おいしいお肉とは

 

店頭でよくお客様に聞かれることがある”柔らかいお肉はどれ?、おいしいのは?”と、いつも返答に困ってしまうのである。柔らかいというのは硬くないということであり、その程度は千差満別であると思います。現在、精肉に関わっている人たち、ほとんどの人がこの”柔らかさ”と”おいしさ”に取り組み、また、この問いに答えることが使命であるように思います。
今回は、”柔らかいお肉とは”をテーマにしました。
肉の柔らかさはなかなか一口では言いあわせられないと思いますが、大別して

 

①:肉の組織(繊維)による硬さ・柔らかさ
②:肉の熟成の進行度合いによる柔らかさがあります。

1)柔らかいお肉とは

肉の組織(繊維)

肉の組織は筋単繊維、結合組織、筋束、脂肪組織、神経組織から出来ている。筋単繊維は、横紋筋と平滑筋の二種類がある。横紋のある収縮性細胞と、血漿(けっしょう)および核によって筋単繊維は出来ている。これを筋鞘が包みこれが集まって筋束となり結合組織によって筋肉が構成している。筋束と筋束の間に血管、神経性組織、脂肪球が存在し、筋細胞の隅々まで血液や神経伝達や脂肪が送り込まれる

 

 

 

図①は肉組織の肉の目の流れ(筋束の流れ)に直角に切った切り口の組織の断面を図式化したものである。細胞を包む鞘も筋単繊維や筋束を結合している結合組織もともに硬い。特に短時間の熱処理によっていっそう硬い舌触りとなる。 したがって肉の目の流れに対して直角に包丁を入れて肉を切ることが肉を切る場合、最も基本をなす条件であることが理解いただけると思う。俗に「タテ目に切った肉は硬くて食べられない」というのは、鞘も結合組織(俗に「あまかわ」、「すじ」)をもっとも多く肉細胞に付着させて切ることになるからである。どんなに良質の和牛でも「タテ目」に切った肉は熱処理によって「くるくるっと」縮んで丸まりゴムのように硬い舌触りになってしまう。肉の目は外観上すぐ見分けることが出来る。

今井義啓 著「精肉読本」より


2)おいしい肉、熟成とは

じゅくせい【熟成】 熟して十分にできあがること。

肉の旬(食べ頃)は魚や野菜と違い採れたてが新鮮(旬)でなく、ある期間を経て旬を迎えるということです。もちろん、魚や野菜の中にも採れたてが一番おいしいとは限らないものが多くあります。果物の中には集荷の時には青々したものでも八百屋さんの店頭に並ぶころには、バナナ・レモンであれば黄色く、トマトは赤く、おいしそうに陳列されている。まさしく店頭に並んでいる時が旬なのであります。肉も同じように店頭に並ぶ時が旬と思います。

肉の旬についてもう少し細かく述べたいと思います。通常、店頭に並んでいるお肉は一体どれくらい前に”と殺”されたのか、”と殺”されてからどのくらいの時間が経過しているのか、ということが肉の旬に深く関わってきます。保存方法によっても異なりますが、2℃±2℃が肉の保存に最適な温度と思います。そして、肉には、大動物、小動物に分類され熟成の進行度合いも違います。大動物とは牛のことであり、小動物とは豚や羊などを言います。人間の食に供物されているこれらは”と殺”されるときはショック死状態であり、その瞬間が硬直する原因であります。この状態を死後硬直と呼び、この硬直をほぐすことが先ず第一です。小動物で約2日間、大動物で約5日から7日間と言われています。ですから、わかりやすく言えば豚肉においてはと殺されてから3日から5日め位が旬といわれています。牛肉においてはと殺されてから二週間めぐらいから旬と言われています。前述した経過日よりいわゆる肉の旬が始まると考えられると思います。

 

肉のおいしさ(旬)

 

しゅん【旬】 魚などの出さかりの味のよい時期。

肉の旬とはどのように肉が変化していくかの過程(熟成)のことであることが理解できたかと思います。熟成とは細胞内酵素による蛋白質繊維の切断のこととも言えます。おいしい肉(旬の肉)とはどういうものを云うのか、

肉のおいしさの要素は蛋白質であり、肉の蛋白質をわかりやすく説明すれば肉汁と繊維(肉片)である。この動物性蛋白は他の食品にはないのが特徴で、その分析をすれば各種のアミノ酸の結合した物質であります。そして、このアミノ酸の結合状態がいわゆる肉らしくなっている時がもっともであるといえる。

肉汁(ドリップと呼んでいる)がおいしさの重要な要素であるが、肉汁を外見の悪さなどから最もおいしい部分を喪失しているのが残念である。肉汁が出た時には別のお椀などにとっておき、加熱調理の時に加えてあげれば一層おいしくなるのは間違いありません。 ドリップ(肉汁)がおいしさの重要な要素であることがお解りいただけたかと思いますが、いわゆる、”水っぽい肉”とは全く別質なものであります。この点についての詳細は又の機会に述べたいと思います。

少々堅い話を書いてきましたが、やはり安くておいしい肉が支持されるであろうし、高いお肉がおいしいとは限らないのであります。肉の旬はわれわれにとっても重要な課題であり、常に”その旬”を料理用途別に提供していくのが使命であると思っています。少しでも、お肉を購入する時、料理をする時の参考になれば幸いと思います。

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